エレクトーンのデジタル特性
電子オルガンに分類されるエレクトーンですが、中身はシンセサイザーに似通ったところがあります。昔のエレクトーンの遺伝子を受け継ぎつつ、ELSでの進化(スタイルファイル準拠)により、自動伴奏が業界標準に対応しました。他楽器との互換性が完全にあるわけではありませんが、エレクトーン固有の部分を除けば標準のスタイルファイルでやり取りができるということになります。
ただ、それ自体がエレクトーンユーザーには恩恵があるわけではなく、仕様が明確になっているということです。例えば、アカンパニメントを自作してみたいと思っても、その仕様が明らかでなければ無理です。エレクトーン固有であれば公開される可能性は薄いでしょう。ところが、これが標準の仕様として明らかになっていれば、アカンパニメントパターンを自作することも可能になるわけです。ELSシリーズでは、簡単なアカンパニメントはエレクトーン側で作成することはご存じでしょう(リズミックコードとして2パターン)。昔のHSシリーズでは、かなり自作的なアカンパニメントを作ることができた(CSP)ようですが、その後のELシリーズには受け継がれず、自分で操作したことはありません。HSで実装されたCSPやRSPはELシリーズでは搭載されなかったのは有名な話です。
自作できるのは何か?
リズムパターンの作成時に、リズムと左手鍵盤のアカンパニメント、ベースパターンはアセンブリで既存のパターンをコピーできます。まさにこの範囲が自作できる範囲で、リズムと左手、ベースのパターンですね。これを定義しているのがスタイルファイルで、USBメモリなどでスタイルファイルを読み込んでエレクトーンで使用することができます。RPPの「ファイル」から読込ができます。他の機器で使用しているスタイルファイルはもちろん、自作のファイルもこちらから読みます。
スタイルファイルを自作する
管理人が使っているのはDominoというフリーソフトです。スタイルファイルを作るばかりでなく、演奏用のMIDIファイルを作成することもできますし、そのMIDIファイルをスコア作成用のソフトで読み込めば楽譜も楽々と作成できます。無料で使えるのが嬉しい限りです。
さて、作成しようとすると、ファイルの定義が必要です。この定義についてはMIDIファイルの作成にもスタイルファイルの作成にもそれぞれ必要で、標準の設定に加えて、エレクトーン独自の定義もあるので、ここはある程度知識は必要です。ただし、難しいことを覚える必要はなく、一番賢いのは、エレクトーンから出力されるファイルを参照して定義部分をコピーするのが良いと思います。
ここまでできれば、あとはパソコンでリズムパターンもアカンパニメントも作成することができるわけです。もちろん、エレクトーンのパネルでリズムやコード1/2のアカンパニメントを作成できますが…不便ですよね。これがパソコンで作成できて、スタイルファイルの読込とアセンブリだけでできるのであれば、かなりの手間軽減にはなります。軽減とは言え、どちらにしても地道な作業ですね。
リズムとコード1/2はそのまま
リズムの打ち込みはそのまま…ではあるのですが、スタンダードのドラムパターンもELSとは若干違います(C2以下の低音部)。スタンダードのドラム以外であれば、スタイルファイルを読み込んだあと、エレクトーン側で変更するのも手です。
コード1/2(ch12/13)については、CM7の音でリズミックコードを打ち込む必要があります。もちろん、エレクトーン側と互換を持つという意味ではです。ベース(ch11)以外のアカンパニメント(ch12-16)と同じように、自由に組むこともできます。が…自由に組むためにはかなり知識と作業が必要になります。ここは需要があれば別枠で概略を解説しようと思います。元々のエレクトーンのアカンパニメントについては、認識コードがメジャーかマイナーかなどでパターンを切り替えているものもありますが、高度なことはやっていません。スタイルファイルの仕様に従ってアカンパニメントを鳴らす仕組みを使えば、ほぼ自在にアカンパニメントを作成することができます。
>昔のHSシリーズでは、かなり自作的なアカンパニメントを作ることができた(CSP)
残念ながらHSのCSPはパターン作成機能ではなくコードを演奏順に並べて下鍵盤とペダルを自動で押さえて鳴らしてくれる機能にすぎません。ユーザーアルペジオコードで刻みパターンの作成だけが可能でした。CSPは実際はもっぱら副次的な機能であるレジストレーションメモリーの自動切替装置として使われていたのはご存知だと思います。