「I LOVE…」のコード進行をみる(2)
主に前半のコード進行はこちら
ディグリーコードで見てみる
全般的に特徴的なのは、起点が常にDM7であること。調性はAMajですので、普通にダイアトニックコードのⅣ度のセブンスコードです。多くの楽曲をみると、モチーフの最初はⅠ度のコードで入るのが安定。途中のモチーフだからこそⅠ度以外で動きを感じさせたりするのですが、もっぱらⅣ度から入るという…売れる曲は何かしら今までにないものを持っていたりするものです。
Ⅳ度のあとの動き
Ⅳ度のあとの動きは、一旦Ⅰ度に戻るか、Ⅳ-Ⅴ-Ⅰ、あるいはⅣ-Ⅴ-Ⅵの形が自然です。Aメロ以外ではどのフレーズでも動きを感じるのはこれが理由でしょうか。
Bメロ:Ⅳ-V-Ⅲ-Ⅵ
Cメロ:Ⅳ-Ⅴ-Ⅰ-Ⅵ
Ⅳ度はサブドミナントとして、I度に戻るかⅤ度に移動するかのいずれかが安定した動きです。Ⅳ-Ⅴ-Ⅰは王道、Ⅳ-Ⅴ-Ⅵは平行調に部分的に転調したような感じになります。Ⅲ度を追加してドミナントモーションから、Ⅳ-Ⅴ-Ⅲ-Ⅵの王道進行が有名です。
Ⅳ度のあとにⅢ度?
それでは、Aメロの動きはどうなるでしょう?Ⅳ度のあとにⅢ-Ⅵのドミナントモーションが用いられ、いわゆる「Just The Two of Us進行」です。Ⅳ-Ⅲ-Ⅵ-Ⅴ-Ⅰでトニックに戻ったように感じつつ、Ⅴ-Ⅰ-Ⅳのツーファイブの勢いでトニックを通り越してサブドミナントに戻ります。
Aメロ:Ⅳ-Ⅲ(maj)-Ⅵ-Ⅴm-Ⅰ
ダイアトニックコード上、Ⅲ度はマイナーコード、Ⅴ度はメジャーコードなのですが、この進行ではⅢ度はメジャーコード、Ⅴ度はマイナーコードが用いられます。平行調へ転調したような雰囲気を醸しつつ、4小節程度の中でメジャーとマイナーを行ったり来たりするので、浮揚感が生まれてきます。
このⅣ-Ⅲの進行ですが、Ⅳ度の裏コードがⅦ度にあたり、Ⅶ-Ⅲ-Ⅵという裏の進行も見え隠れします。もちろん、裏コードは構成音の半分が異なるので単純に適用することは難しいことが多いです。
後半ではⅣmがポイントに
通常、ダイアトニックコード上でⅣ度はメジャーコードです。Aメジャーコード上ではDメジャーセブンスです。これをⅣm(Dマイナーセブンス)に置き換えて使っている個所があります。
Bメロ後半:Ⅱ-Ⅰ-Ⅳm-Ⅴ-Ⅳ
用語としてはサブドミナントマイナーと言われるコードで、Ⅳ度のマイナーセブンスのコードとして用います。この響きがなかなかのアクセントとなっています。通常、サブドミナントマイナーは転調の起点としたりすることも多いですが、ここでは効果として使い、マイナーセブンスコードなのにどこか別の明るさのようなものを感じさせます。
全体的なコード進行として
全般的にはⅣ度のコードが大活躍しているように感じます。主張はそれほど激しくはありませんが、使われるポイントが絶妙で、躍動感を持って生き生きとしているようにさえ感じます。あとはC#7(9#)に見られるテンションコードです。コードの構成音としては半音異なるだけなのに、実に効果的なハーモニーを奏でます。本来的には不協和音として認定される音程が生きてくるのは大変面白いことです。
せっかくなので弾いてみた
レベル的にもちょうどいいので、実際に弾いてみました。仕上げの段階でテンポアップして弾いていたら戻れなくなった感もあり…通常♪=86のところ、25%アップの♪=108でまとめました。弾き歌いなら♪=86がいいのですが、エレクトーンの演奏としては少し早いほうが落ち着く気がしました。